昔のあたしと今のあたし

緑のアイシャドウに
お金を払っている時
思い出したのは
幼稚園児のあたし。


ピンクの服が大好きだったが
「ピンクは子どもの色なのよ」と
母に言われて
以来、ピンクを着なくなった。
今でも絶対ピンク系統のマニキュアは買わない。


紅茶やコーヒーに砂糖を入れない飲み方が
とても大人の感じがして
無理をして砂糖を拒否していたこと。
今ではすっかり
紅茶やコーヒーに砂糖はいらない。


お正月。
加藤家で集まると
年下で女の子のあたしは
妹と二人
従兄弟や祖父に可愛がられながらも
やっぱりどこか軽視されていることを
感じていたし
男の従兄弟たちよりも女のあたしの方が
学校の成績が良かったことや
大学の偏差値が一番高かったことが
祖父の気に障っていたことも
「育て方を間違えている」とか
「25歳までには結婚させろ」とか
母が祖父から言われていることも
知っていたから


あたしは早く
大人になりたかったし
男の子になりたかったし
一人で生きていくんだって
小さい頃からずっと思っていたし
「何歳までに結婚したい」とか言う女の子は
バカだと思っていた。


そんな空気が常に漂っていたあたしを
遠目で母は
心配していたし
今でも多分そうなのだが
今のあたしは
自分でも驚く程
そうでもない。


「届いたのはメールじゃない、気持ちだよ!」
というのは今のあたしのメールの着信音で。
図書館で鳴ったときは
かなり恥ずかしかった。
教育実習先の高校生から。
夏休み明け実力数学テストで
91点を取ったとの報告。
あっちとかこっちとかで
みんな頑張っている。
なんくるない」を借りる。


買い物をして
漫画喫茶で時間を潰して
映画「NANA」を観る。
NANA」を実写化するのは
ドラゴンボール」とかを実写化するより
難しいんじゃないか?
隣に座っていた女の人は
名シーンになると
泣きながらポップコーンを食べていた。
泣くのか食うのか
どっちかにしてくれ。
ライヴシーンは一見の価値あり。
暗い中自転車をこいで
一つだけ抹茶プリンを買って帰る。


部屋でひとりで
一人分のご飯を用意することに
強大な違和を感じた時には
もうどうしようもなかった。
あたしは今まで
したことがなかったのだ。


そんな自分を
昔のあたしがみたら
ものすごく憤慨するんだろうが
今のあたしは
そうでもない。


もちろん、
まだまだ違和や腹立たしさは
あるけれど。