保険員との攻防

会社のエレベータ前に
保険員の女性がいる。


エレベータが来るのを待っていると、
すかさずうまい棒を2本持って歩み寄り
「どーぞ、もう一本どーぞ」
と手渡された。


「あ、すみません」
なんて容易く受け取ると、


「あ、じゃあね、ここ、
 誕生日だけでいいんで書いてください」


うまい棒を2本貰ってしまった手前
断れなかった。


「あ、あと星座も、
 あ、あと名前も」


と、たたみこまれるように
要求はどんどん増えていき、


「あ、あと内線も」


と言われた。


瞬時に、内線はいやだなと思って、
とっさにでたらめを書こうと思ったが、
社内の誰かに迷惑がかかると思って


じゃあ書かなきゃいいのに
うまい棒を2本貰ってしまった手前


書いてしまった。


デスクに戻り、
隣に座る後輩の子にうまい棒を一本渡し、


「かくかくしかじかで、 
 電話がかかってくると思うから
 そしたらそんな人は居ませんって、
 言ってください」


と伝えた。
後輩には、
「何やってんすかー」
と言われた。


翌々日、またエレベータの前で
保険員の人に捕まった。


先日手に入れた私のデータをもとに、
「私新聞」というのを作って、くれた。


私の誕生日に王さんが引退したらしい。
私の誕生石はトパーズらしい。


どうでもいい。


貯金をしっかりしていないと答えると、
「だめよ〜」と説教された。
定期健診ちゃんとしてないと答えると、
「だめ!」と説教された。


私を年下だと思って
(いや年下なんだが)
上から目線で営業するその態度に
少しイラッとした。


やっぱり、
上から目線の広告じゃモノは売れねえな、
と思った。


次にあった時はサラリーマン川柳を、
その次にはティッシュを、
くれた。


もう、何もいらないから、
エレベータの前に立つ度にドキドキしてしまう私を
解放してください。。。