追いはぎ

家の近くには
古い銭湯があって


寒い中
ちょいと遅く帰ってくると
430円贅沢に払って
温まりたくなる。


カッポーン


という古き良きこじんまりな浴場。


おばあちゃん用の温度設定、
薬湯に出たり浸かったり。


来ていたおばあちゃんと
お話をする。


腰の曲がった小さなおばあちゃんで、
なんと神保町から自転車で
いつも来てるという。


だって、もう終電過ぎてるんですよ。
あ、だから自転車なの?
え?


濡れた頭を
大きなブランケットで包んで


「気をつけてね、
 ちょっと前、
 追いはぎが出たそうだから」


と教えてくれた。


ちょっと前って、
いつの話だろう。


「おやすみー」


暗闇の中を
明るく去っていく
おばあちゃん。





私たちは
老人や老いゆくことを
もうちょっと素敵に捉えても
いいんじゃないかなって
思った。