ポコポコ

友だちと居酒屋さんでご飯を食べて、
帰り道24時過ぎ。
地下鉄から外へ出る交差点で。


明らかに変な音のするスクーターが
信号待ちをしている。


「ポコポコポコポコポコ」


水の中から湧き上がってくる
気泡のような
たいへん気の抜けた音である。


「ブルルン」とか「ブオン」とかではなく


「ポコポコポコポコポコ」
である。


赤いトレーナーに
白いヘルメット
口ひげに
キリスト様みたいな髪形をした
おっさんは、
青信号になると


「ポコポコポコポコ!!」


と、気泡の勢い強く、
スクーターを発進させた。


静かな街にひびく、
ポコポコ。


その時、思った。
世界中のスクーターやバイクは
みんな、ポコポコになればいいのに。


そしたら、
ヤンキーだって怖くなくなるし、
子どももぐっすり眠れるし、
ケンカしてたカップルだって、
きっと思わず笑ってしまう。


みんな
しあわせになれる。


みんな
しあわせになれたらいい。






ありえないけど。