カメラ小僧

唐沢山を詣でて
ぼやけた富士山を見る。


遠く
新宿の高層ビル街も見える。


天狗岩から見る山間は
ちょうど傾き始めた
光から生まれた影で
くっきりとしていて美しい。


雪の積もった浅間山
遠く眺める。


足利に向かって
鑁阿寺を詣でる。


飛行機雲が
大きく伸び始めた太陽の中に
吸い込まれていく様を
追うものの、
見つからず。


さて
どこへ行きますか。


少し山を登り
織姫神社を目指す。


墓が在るという事実に
正しい生活の営みを見るようで
ほっとする。


赤と緑と黄色の
原色神社
頭を下げる。


空色から橙へ
橙から紫へ
紫から藍色を
見つめる。


烏の何羽かが飛ぶ。


猪出没注意の看板を
いくつも見つける。


空は暗くなっていき


さて今度こそ
どこへいきますか。


右でも左でも真っ直ぐでも
どこでもよござんすよ。


その瞬間の直感で
車を走らせるという遊びは
なんと贅沢な遊びだろう。


パスタ屋さんで
夏にかけて撮った
写真を見せてもらう。


写真て
人が写っていないと
なかなか味気ないとか思っていたけれど
カメラ小僧の撮った写真は
ちょっと驚くほど
どれも味わい深かったし
カメラ小僧が
何を見て何を思って、
多分それは
特に説明つくほどの考えではないのだろうけれど
だからこそ綺麗な、
何とはなしに
撮りたくなったその理由を
考えたりしながら見るのが
楽しかった。


写真を通して
無邪気なカメラ小僧を想像する。


足利から帰る途中
車内から
山火事を見る。


中学校へ寄ってみる。


中庭を歩く。
カメラ小僧のクラスは残っていたが
あたしのいた9組は
もうなくなっていた。


昇降口から覗く
真っ直ぐな廊下が
非常出口の緑に照らされていて
怖かった。


校庭で
ボールを投げる。
校舎を眺める。


門のあく音がして
車が乗り込んできて
隠れる。


懐中電灯で照らされる教室。


決まった時間の見回りか。


背をかがめて
急いで学校から逃げる。


後5分早かったら
怒られてたかもしんないと
ドキドキする。


本屋さんへ寄って
それぞれ本を買って帰る。


またね。
また春休みにでも。