嘘をつく人間。

仙台から松島へ向かう。


日本三大景観。


透かし橋を渡る。
歩くところが
はしごのようになっていて
下の海が見える。


「足元を見て渡りなさい」
という教訓。


怖いよ。
足元を見るという行為は。


おみくじを引くと
大吉。
願い事、叶う。
事故、交通事故に気をつけろ。
ということを読んで
横断歩道を渡って
市場へ。


牡蠣といくら丼を食べる。
牛タンも食べる。


観覧亭で
お抹茶と団子を食べる。


遊覧船では
かもめにかっぱえびせんをあげる。
くちばしが近付いて
さっと離れていく瞬間
怖くてでも達成感もあり
どきどきする。


近づいてきたかもめを捕まえる
男がいた。
首を掴んで
やったやったと騒ぎながら
友人に見せ付けている。
うれしそうに笑って
海に叩き付けた。


奴、
おぼれちゃえばいいのに
とか思う。
きっと誰も助けてくれないさ。


曇っていたけれど
三大景観・松島を眺めて
松尾芭蕉の俳句を反芻する。


「松島や ああ松島や 松島や」


言葉にならないほどの美しい風景。
俳人の鋭敏な感性に熱くなる。
カメラとかビデオとかなかった時代の
言葉で残す慣習は
やっぱり憧れる。


松尾芭蕉が松島にやってきた時は
雨だったらしいけどね。


つまり。
風景を残した俳句には
さりげなくフィクションが含まれている。
正確じゃない、という
美しさと奥ゆかしさと創作の楽しさ、その意味。


つまり。
上手に嘘をつける人間こそ
素敵な芸術家。


うん、
上手に嘘をつける人間になろう。


埼玉にいる妹が
熱を出したと
母からメール。


つくばではなく
夜、急遽埼玉へ向かう。


ラーメンなら食べるというから
ラーメンを作ってやる。


ラーメン食えるくらいの元気に
一安心して
床で寝る。


ちょっと旅人気分。