川中温泉

群馬は山間の秘湯、
川中温泉へ足を運ぶ。


日本三大美人の湯の一つとして
知られる。


旅館は「かど半旅館」、
家族経営のアットホームな宿である。


温泉は、無色透明、
かすかにとろっとしている、
冬には少し寒いくらいの、
ぬる湯である。


今日の群馬の山奥は、
冬のような寒さだったので、


正直、
夜に入った露天風呂は
寒くてすぐ出てしまったが、


内湯は、
いつまでも入っていられるほどの
ぬくぬくとした温度で、
眠ってしまいそうだった。


「きちんと体は温まるのか?」
と心配だったが、いつの間にか、
しっかり芯までほっこりしていて、


なんとも不思議な、
初めて経験したタイプの温泉だった。


内湯につかって
ぼんやりしていると、


おばちゃんが一人入ってきた。


旦那さんと
秘湯めぐりが趣味で、
お互い仕事をしているから
なかなか時間が合わないのだけれど、


今日は、
結婚記念日だということで、
ずっと2人とも行ってみたかったここの旅館を、
旦那さんが頑張って押さえてくれたとのこと。


予約がとれた時、
旦那さんは「とれたー!」と叫んだそうだ。


「いいですね、素敵ですね」
と言うと


「長く一緒にいると、
 そうなるもんよ」


とおばちゃんは言うが、


「長く一緒にいる」ことが、
素敵なのだと私は思う。