バラ柄

一つ上の先輩は
とてもおしゃれで
でもそれは
アウトなのかセーフなのか
判断のつきかねる
おしゃれさんなのである。


黒のベロアのジャケットが
白くなっていたので
「埃がついてますよ」と
払ってあげたら
実はそれは柄であったり


びっくりなチェックの
ラッパズボンが
あつらえたように似合っていたり、


とにかく
おしゃれさんなのである。


中でも気になるのが
赤系統のバラ柄ジャケットで
私は「貴公子ジャケット」と
呼んでいる。


着たら誰でも貴公子風になれる、
魔力を放つ、
ジャケットである。


生地は、
カーテンと酷似している。


今日、それを着させてもらった。


でかいそれは
私のひざちょい上くらいまであり、
ちなみに今日の私のスカートも同様
カーテン生地風柄スカートで
柄on柄で
ひどいありさまだった。


それを見てた別の先輩が


「お前はなんか、
 ルノアールって感じだな」


と言う。


ルノアールってなんですか。
 芸術ですか。貴公子ですか」


「喫茶店だよ」


え!!
ジャケットを着て
茶店!?


周囲に皆さんにも
「着てみてください」と
すすめたが、誰も着ない。


着たがらない。


極端に
「ムリだよー」と笑いながら
拒否するのではなく
「いや、私は」「いや、俺はいい」
みたいな感じで拒絶するので
本当に着たくないのだろう。


そう思うと、
この服は大変にしあわせな服だと思えてきた。


ちゃんと買ってくれる人がいて
あつらえたように似合う人がいて
日の目を浴びながら
更に話題を振りまきながら


存在し続けることができているのだから。


先輩が居なかったら


いつまでも
マネキンにぶらさがっていた
布に過ぎなかったのかもしれないのだから。


先輩の感性は
いろんな服たちの救いとなり、
そしてこれからも
救っていくんだろう。